目次
腸はとても大切な「臓器」
1 腸は免疫力の源
2 腸は第2の「脳」
腸は小腸と大腸から構成されており、栄養分の消化・吸収、老廃物の排出を行います。
その全長は人間で7~9m程度、面積はテニスコートよりも広いと言われています。
2500年前、古代ギリシャの時代に、医学の父と称されるヒポクラテスが言った言葉、
・・・ 全ての病気は「腸」から始まる。 ・・・
現代の遺伝子分析化学を筆頭に、免疫学、生理学、病理学、微生物学、他にもあらゆる分野の科学により、これまで知られていなかった「腸の役割」が発見されることで、ヒポクラテスのこの言葉は今、再認識されています。
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1-1 腸は全身の免疫力の源
小腸は胃で分解された食べ物をさらに消化して、これを吸収するという命の根源的な働きをしています。
この働きは、口から入った「体に害を及ぼす細菌やウィルス」を、休むことなく撃退し続けなければならないということを意味しています。
全身の約70%の免疫細胞が集中しているのはそのためです。
小腸の病気が他の器官にくらべて少ないのもうなづけますね。
免疫細胞の数が多いだけではありません。
小腸の表面を隙間なく覆う絨毛(じゅうもう)の内部は、体に入ってきた病原菌やウィルスを、免疫細胞が敵味方識別をする学習の場ともなっています。
この絨毛の中で、体内に侵入してくる病原菌やウィルスの識別を学んだ免疫細胞は、血管を通って速やかに全身に展開し、日夜、片時も休むことなく体を守り続けます。
1-2 腸は第2の「脳」
腸管は無数の神経細胞が取り巻いていて、その数およそ1億個。
この神経細胞が筋肉の働きや消化吸収を、脳を介することなく独自に行っています。
また、腸の中に棲息する腸内細菌たちによって作られる神経伝達物質(神経細胞間の情報伝達を役割とする物質)は、感情のコントロールや精神の安定に深く関わっていて、思考や判断まで影響を及ぼすことが、「腸は第2の脳」と言われる所以です。
私たちが日々の生活で感じる快・不快。つまりストレス。
私たちが脳で理性的に考えたり、判断することと同じように、私たちの腸内では免疫細胞と腸内細菌が相互作用しあい、このストレスに帰因する体の変化を看過することなく見守り、反応しています。
脳と腸が互いに影響を及ぼしあう関係は「脳腸相関」と呼ばれており、腸内環境が改善すると脳も落ち着き、脳が落着くと腸内環境も改善されます。
「病は気から」といいますが、この言葉は「脳腸相関」と同意語です。
気持ちが滅入る期間が長引くと、神経伝達物質の生成や正常な情報交換が損なわれ、神経細胞、免疫細胞の働きが低下して健康を損ないます。
逆に腸内環境がよく調い、神経伝達物質が正常に分泌されて神経細胞や免疫細胞がしっかりと働くと、自律神経も正常に働き、結果的によく眠れ、疲労回復も早く、必要以上にネガティブな心理状態になることは防がれます。
おしまい。