塩と命

1 塩という文字・言葉の成り立ちとその意味

「塩」という漢字は、「鹽」を簡略化したもので、その意味は、「袋に入った「岩塩」を皿の上に置いて、それに家来が旗を立ててしっかりと見張っている様子」なのだそうです。塩がとても貴重なものだったということがうかがえますね。

給料を意味する英語のsalary(サラリー)の起源も、古代ローマで「塩(sal)を買うために兵士に与えられたお金」からきていることからも、塩は生きていくうえで欠かせない貴重なものだったといえます。

日本では、平安時代中期に編纂された「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」という、今の漢和辞典、国語辞典、百科事典を合わせたような書物によると、「鹽(塩)」を「しお、うしお」と読んでいました。当時は、海水が結晶化した塩も、海水の満ち引きの現象をさす「潮」も区別なく、どちらも「しお、うしお」でした。

2 命に根ざした「塩」、「潮」、「海」の認識

日本では「血」のことを「血潮(ちしお)」といいますね。
科学的に分析される以前から、「血」と海水の現象である「潮」、海水が結晶化した「塩」が、本質的に同じものだと認識していたのだと思います。

ヒトは母体の羊水にひたって、受精卵から魚類、爬虫類、両生類、そしてヒトへの10億年分の進化を、約十か月と十日の時間をかけて成し遂げます。
妊娠初期から出産まで、母親の胎内で子が浸っているこの羊水も、世界中のいろんな国で「母なる海」という表現がされます。

血も羊水も舐めてみると海水と同じでしょっぱいのだそうです。
人類は何百万年も前から、海の水と自分の体に流れている水が同じだということを、体験的に知っていたということかもしれません。

3 塩と命。生体内におけるミネラルの機能

なぜ大昔から「塩」が命そのものに根ざしたものとして認識されてきたのでしょうか。
それは、下の図を見ると想像できます。
現在、地球上で発見されている元素は118種類
なんとその60%、74種類のミネラルが海水に含まれています。
そして、海水に含まれているミネラルの50%、37種類のミネラルが哺乳類動物の生命維持に必須、もしくは必須であろうと予測されているミネラルです。
そもそも命が何十億年も前に海で生まれたことを考えると、当然と言えば当然のことなのですが。

私たちの体内におけるミネラルの働きは、
細胞外液の量を維持
浸透圧、酸・塩基平衡の調節にも重要な役割
胆汁、膵液、腸液などの材料
体液の浸透圧を決定する重要な因子
神経や筋肉の興奮伝導に関与
血圧低下、脳卒中予防
細胞の分裂分化、筋肉収縮、神経興奮の抑制
血液凝固作用の促進
骨格形成、ATPの形成、エネルギー代謝などに必須
etc.

とにかく、生命維持のためのすべてに直接関与しています。

現在、減塩が声高に唱えられ、私たちは塩分の摂りすぎを気にし過ぎて、「塩」の本来の意味を誤って認識していないでしょうか。

私たちは「塩」=「ナトリウム」=「減塩」ではなく、「塩」=「各種ミネラル」=「命」という視点で見直してみることが大切だと思います。

おしまい。

私たちが今、ここに生きていることの奇跡

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